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地域イメージの構成
―街の環境と緑の関係―
学籍番号 11313088 矢野あゆみ
【構成】
はじめに―緑がもたらす街の環境とは―
1. 一次調査概要
2. 一次調査仮説
3. 緑がもたらしている印象―一次調査単純集計から―
4. 建物と緑の因果関係―一次調査クロス集計から―
5. 一次調査まとめ―緑を通してわかった街の特徴とは―
6. 一次調査結論―今後の方向性―
7.二次調査仮説―街をつくりだす“もの”とは
8.二次調査概要
・二次調査場所
・二次調査日時
・二次調査項目
・二次調査方法
9.緑からわかるそれぞれの街並-二次調査地域別集計より―
10.街との調和からみる「緑」のたち位置-二次調査項目別集計より―
11.二次調査結論―街と緑がおりなす融合空間―
おわりに
参考文献・資料
素データ表
はじめに―緑がもたらす街の環境とは
「良い街」ときいて思い浮かぶものは何だろうか。住人や街並…挙げられるもの
はさまざまだが、そのなかでも私は街中で見られる「緑」に焦点を当て、街並の調
査を進めることにした。世間では街のイメージを表現するのに「品のある高級街」
「庶民的な雰囲気のある下町」などといった言葉を用いる場面がよく見られるが、
何を指標に街をそのような表現をしているのだろうか。高級や下町といったイメー
ジをはかるひとつとして、私は「街全体でみられる緑の量」が関係しているのでは
ないかと考える。歩道を歩いていると、等間隔に背の高い植物が見られることがあ
る。写真 1 のような、背の高い植物のそばに生えてある、場所を問わずどこにでも
生えてあるような雑草のような植物なら、比較的どこにでも見られ、珍しいもので
もないため、これだけでは高級な街といったイメージにつながらず、「下町」といっ
たイメージになるのかもしれない。
一方、写真 3 にある背の高い植物は、どこにでも見られるものでもなければ、放っ
ておいても勝手にどこにでも生えるものでもないため、街中でみたとき、珍しいと
いう印象を受けるだろう。更に、背の高い植物を植えようとなると場所をとること
に加えて、狭い道路だとかえって歩きにくくなってしまうことがある。また、写真
2 は、同じ背の高い植物でも歩道がレンガ調になっており、写真 1 と比較すると道
写真 1 甲南大学の通学路の途中にある十字路
である。閑静な住宅街が広がる一方で、道沿い
の植物が街をおしゃれに演出している。
神戸市東灘区岡本 8 丁目 2015.8.3 筆者撮影
写真 2 JR 摂津本山駅・阪急岡本駅付近にある
植物で、レンガ調の道と調和している。
神戸市東灘区岡本 6 丁目
2015.10.27 筆者撮影
が比較的広々としている印象が見受けられる。そして、背の高い植物と低い植物が
交互に植えられており、レンガ調の道を一層引き立たせている。以上の点から、街
の雰囲気のイメージの指標を図るものとして、緑の量が関係しているのではないか
と考える。
人が思う住みたい街とは
人が生活するにあたって、街は切り離せないものである。ひとくちに街といって
も、上品でおしゃれな街並の「高級」から、親近感を抱き懐かしさを感じる「下町」
まである。街によっては、地名を聞いただけで、街に対するブランド力や憧れから
住みたいと感じることもあるだろう。
住宅・不動産情報サイト「スーモ」で行われていた「住みたい街ランキング 2015
関西」で神戸の街に関して以下のような結果がでていた(※なお、ランキングは上
位 5 位以内のみを表示している)。
居住府県別ランキング(兵庫県編)
ランキング 場所 電車沿線
1 西宮北口 阪急神戸本線・阪急今津線
2 神戸三宮 阪急神戸本線・JR 東海道本線など
3 岡本 阪急神戸本線
4 夙川 阪急神戸本線・阪急甲陽線
5 御影 阪急神戸本線
穴場ランキング
ランキング 場所 電車沿線
1 尼崎 JR 東海道本線・JR 宝塚本線
2 塚口 阪急神戸本線・阪急伊丹線
3 西宮北口 阪急神戸本線・阪急今津線
4 十三 阪急神戸本線・阪急宝塚本線・阪急京都本線
5 千里中央 北大阪急行線
穴場ランキングは兵庫県以外の地域もランキングに入っているが、傾向として阪
急神戸本線沿いの地域が多くランキングに入っていることがわかる。「スーモ」によ
ると神戸沿線にある住宅街のブランド力や憧れの強さはもとより、再開発による街
の発展がランキング上位に食い込む要因として挙げられるそうだ。移動手段として
よく使われる電車だが、特急や新快速は電車での移動時間は最も少ないのだが、都
市部やよく利用される駅しか止まらない。その点を考えると、ランキング入りして
いる街の人気の強さがよくわかる。暮らしていくにあたって、移動のしやすさは誰
でも考えるだろう。逆に、どんなに街のブランドが強く良い街並であっても、電車
を使った移動が難しいことに加えて最寄り駅に電車がほとんど止まらない場所だと、
住むことはおろか気軽に訪れることもできないだろう。再開発による街の発展とい
(左上)写真 4 JR 尼崎駅前 駅出てすぐにある歩道橋にて撮影したもの。
(左下)写真 5 尼崎市 3 丁目・JR 尼崎駅南口側 尼崎にはこのような大きな建物が目
立ち、緑が小さいものが多い。
(右上)写真 6 JR 尼崎駅前 駅を反対側から全体を撮ったものだが、周辺は意外と背
の高い緑が見られる。
(右下)写真 7 尼崎市 3 丁目・JR 尼崎駅北口側 飲食店はこのような小さいものが多
く、こじゃれたカフェなどといったものは見られなかった。
2015.11.17 筆者撮影
う点で考えると、甲南大学がある岡本も大
学自体の建物をリニューアルしたり、駅周
辺のお店の閉店・開店を繰り返したりとい
う風景が度々見られる。私としては、これ
が再開発にあてはまるかどうか微妙なとこ
ろだが、全く変化がなさ過ぎてもマンネリ
化を起こし、飽きられる可能性があること
を考えると、日々の生活のなかで街に変化
が見られるというのは、住んでいる側も刺
激があるのではないだろうか。その点を考
えると、緑を増やすのは、街に変化を起こ
すという点ではある意味街自体を変えるこ
とよりも容易なことであり、誰にでもでき
ることではないだろうか。
下町とは―岡本と比較して
写真 3 甲南大学の生協付近にある門
から出てすぐの植物である。岡本の住
宅街ではこのような背の高い植物のあ
る建物が数多くあるのだ。
神戸市東灘区岡本 8 丁目甲南大生協横
2015.7.7 筆者撮影
写真 8 JR 三ノ宮駅と阪急神戸三宮駅
から出る電車が走っている橋と横断歩
道の風景である。
阪急神戸三宮駅前 2015.11.18
筆者撮影
写真 9 阪急神戸三宮駅横の通りである。
写真を見ると植物がないわけではないが、
岡本程植物が目立ってないように感じる。
阪急神戸三宮駅前 2015.11.18
筆者撮影
街のイメージを表わすのに高級という言葉と同じくらい耳にするのが「下町」で
ある。下町と聞くと前半でも述べたように親近感がわき、はじめて目にした街でも
不思議となつかしさを感じるものである。「スーモ」によると、穴場ランキングにも
ランキング入りしている尼崎と十三は典型的な下町の代表例と呼ばれているそうで
ある。では、下町と呼ばれる街の理由はどこにあるのだろうか。その理由のひとつ
として、ここでも緑の量が関係しているのではないかと考える。高級と言われる街
は住人や街並はもちろんのことだが、街中で見られる植物の量が多いのである。岡
本と比較すると、尼崎では植物よりも背の高い建物やよく目にするサイズの建物が
よく見られた。交通網の発達さや沿線が多い点から下町とは言い切れない部分もあ
るが、緑よりも建物のほうが多いことと、高級な街で見られた背の高い植物が撮影
時ではあまり見られなかったことを考えると、下町という分類になるのではないか
と思う。
緑の見られない繁華街-岡本と比較して
そして、同じ緑が街中でほとんど見られない街として、居住府県別ランキングに
入っていた「神戸三宮」が挙げられる。しかし、三宮は尼崎のような下町というイ
メージが根強いわけではなく、兵庫県内ではメディアで頻繁に取り上げられるほど
有名な街である。それにも関わらず三宮では街中で岡本ほど多様に緑が見られるイ
メージがほとんどない。
写真をみると、撮影時でも岡本同様背の高い植物も見られるのだが、周囲の建物や
商業施設がかなり多く隣接している。写真から考えると、岡本のような住宅街の多
い街では植物が多様にみられ、街並とバランスよく調和しているため高級な演出を
しているが、逆に三宮のような商業施設が盛んな街では、植物より建物が多く点在
しているため、商業施設等と植物とがバランスよく調和できず、高級というイメー
ジが薄いのかもしれない。
本調査について
本調査では調査する街の対象を先ほど述べた「スーモ」で挙げられていた、住み
たい街ランキングから 5 つに絞り、ランキングに選ばれる要因を緑という観点から
探り、典型的な下町の代表格といわれる街からブランド力を誇ると言われる街まで、
イメージに挙げられている理由を探りたいと考える。
1.一次調査概要
一次調査日時
2015 年 8 月 3 日月曜日(12:10~13:07)
8 月 9 日日曜日(13:05~14:06)
9 月 18 日金曜日(18:24~19:25)
一次調査場所
神戸市内に絞り、甲南大学キャンパスのある岡本とポートアイランド(以
下ポーアイ)、六甲アイランド(以下六アイ)の三つを調査した。なお、調査
ルートは学校から最寄りの道路で調査を行なった(地図参照)。
※左から岡本・ポーアイ・六アイ。
(Google マップ引用)
一次調査方法
岡本とポーアイ、六アイの調査場所のところで載せた地図の赤く塗られた
部分の範囲内で各 10~15 箇所調査を行う。
一次調査項目
基本属性
・調査地域(岡本を軸にポーアイ・六アイを比較する。)
・調査日時
調査目的に沿った項目
・植えられている植物の割合(植物の大小や大きいものと小さいものとの
比率)
・植物の大きさ(植物の背丈の高低、どんな大きさの植物が多いか 5 段階
で判断)
→1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植物と
ない植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ
・植物の植えられている量(外観に植えられている植物の量の多さを 3 段
階で判断)
→1.多い(家を囲むように植えられている)
2.普通(外観にも植えられているのが見られる)
3.少ない(数えられる程度で、外観にまでは植えられているのが見ら
れない)
・植物のある建物の種類や場所(一軒家やマンション、公園、お店など)
・家の大きさ(最初にみた印象から大きいかそうでないかを判断)
・家の雰囲気(外観の雰囲気から派手かそうでないかを判断)
---------------------------------------
・街歩く人の雰囲気(10 数人ほど調査したのち、上品なマダムタイプの人
が多いか庶民的な家庭的な人が多いかを総合で判断)
・車(外車が多いか日本車が多いか)
・調査した街のイメージ(観察調査を行った結果から高級な街か庶民的な
街かを判断)
一次調査素データ表の項目
No.、日時、地域、植物の割合、植物の大きさ、植物の植えられている量、
建物や場所、家の大きさ、家の雰囲気(、街歩く人の雰囲気・車、調査し
た街のイメージ)
2.一次調査仮説
街の雰囲気作りのイメージ形成に植物が関係していることについて、私はは
じめにでも述べた岡本の住宅街の街並みと地元博の住宅街の街並みのイメージ
の経験から、次のような仮説を設けた。それは、植えられている植物が大きい
ものが比較的多く、量も多い家が見られる街ほど高級でおちついた雰囲気のあ
るイメージがあり、逆に植えられている植物が小さいものが比較的多く、量も
すくなければ、植物さえうえてない家が見られる街ほど庶民的で親近感のわく
ようなイメージがあるというものである。
はじめにでも述べた岡本と広を例にみると、高級な街であるといわれている岡
本は商業施設や道路脇などでしかみたことがないような大きさの植物を目にす
ることが多い。大きい植物を植えていない家もあるが、その分家を囲むように
多くの植物が植えられているのを目にすることが多く、植物をまったく植えて
いない家があるイメージはあまりない。一方で、広はもちろん大きな植物を植
えている家もあったがそれも 1~2 軒いるかいないかの程度で、むしろ植物を
植えている家をみつけだすことのほうが大変なくらい少なかった印象がある。
植えていても趣味程度で気軽に育てられるような背丈のない植物がほとんどだ
ったように思う。
以上のことから、私は高級な街だとイメージする街は植物のある家が多く、
逆に高級ではないイメージの街は植物のない家が多いのではないかと思う。
3.緑がもたらしている印象―一次調査単純集計から―
観察調査で得られたデータを以下(図 1-1~図 1-8)のように単純集計した。
図 1-1 は各調査場所で調査した際の
家:緑の比率でみたときの緑の割合を
大中小で表したものである。
マンションや一軒家等で大きいもの
を目にすることはあっても緑の割合と
して中くらいや小さいものが集まって
いるものは見られても木のような大き
いものはあまりないだろうと思ってい
たが、グラフを見てみると 9 割で 20 パ
ーセントと意外と多い結果となった。
調査した箇所の中には背丈のある木を
数個植えて、他にはあまり植えないと
いうつくりのところがときたま見られたため、調査結果にも反映されたのだと思
う。
図 1-2 は各調査場所で調査した際の
家:緑の比率でみたときの緑の割合を
大中小で表したものである。
ちなみに、中くらいの大きさとして
は写真 2 でみられるような、塀の上に
ずっと連なって生えている植物を中と
定義している。ちなみに、中の植物の
ある家は、集合体で家を囲むように植
えられているものが多く見られた。ひ
とかたまりの量も大きさもかなりある
ため、図 1-1 のように 5 割以上の割合
の箇所はなかなか見られなかったが、データが 1~4 割のところが平均で 20%前
後ある点でいうと興味深いと思った。
2% 4%
7%
9%
11%
13%
16%
18%
20%
図1-1 緑の割合(大)
(N=45)
17%
22%
28%
33%
図1-2 緑の割合(中)
(N=45)
1 2 3 4
図 1-3 は各調査場所で調査した
際の家:緑の比率でみたときの緑
の割合を大中小で表したものであ
る。
小は大や中ほどスペースをとる
わけでもなく、どんな人でも気軽
に植物を植えられるため、データ
的に一番変化のある結果が表れる
のではないかと期待していたが、
グラフの割合の形が図 1-1 と似て
いることに意外性を感じると同時に面白さも感じた。調査場所では大きいものが
頻繁に見られたが、だからこそ小さいものが比率としても大きいものを良く際立
たせられるのかもしれない。
図 1-4 は家々に植えられている緑の
大きさを五段階で評価したものであ
る。
一番多かったのは 33%で「5 背丈あ
りのみ」だった。背丈ありと背丈なし
とで見てみると、6~7 割の箇所が背丈
ありで、2 割の箇所が背丈なしと、調
査場所では圧倒的に背丈ありの建物
や場所が多いことがわかる。
六アイも岡本も高級なイメージを
抱くが、緑の大きさが背丈のあるもの
が多いという結果がでている。ということは、ポーアイもふたつと同じように高
級なイメージが抱かれているのではないかと感じた。
3% 6%
8%
11%
14%
17%
19%
22%
図1-3 緑の割合(小)(N=45)
1 2 3 4 5 6 7 8
7%
13%
20%
27%
33%
図1-4 緑の大きさ(N=45)
1 2 3 4 5
写真 10 8/3 岡本 8 丁目(甲南大学付近の十字路) 筆者撮影
図 1-5は各々で植えられている緑の量
を 3 段階で評価したものである。普段通
学路を通っていても緑の豊かな家が
度々見られたため、私の予測としても緑
の量が多いところが多いのではないか
と思っていたが、結果をみてみると50%
で「3 少ない(外観からはほとんど見
えず、数えられる程度)」と意外と結果
となった。建物や街の雰囲気をおしゃれ
に際立たせるという意味で考えるとあ
まり多くは植えないのかもしれない。
図 1-6は緑を調査した際の建物の大き
さを表わしたものである。データをみて
みると、一番多いのは 44%で「大きい」
だった。少し大きめも普通も 28%と同
じ結果になったが、大きい建物は岡本や
六アイでよく見られ、特に六アイでベッ
ドタウンと言われているのにふさわし
く何階建てかわからないような高いマ
ンションがよく見られた。統計にとって
はいないが、ポーアイでも六アイと同じ
ようなマンションがみられた。一方、岡
本では大きさはあるものの、背の高い建物はほとんど見られなかったため、かな
り高い建物を作れるのは人工島ならではなのかと感じた。
図 1-7は調査した建物
の雰囲気から感じた印
象を二つまであげ、グラ
フ化したものである。こ
れは一つ目に感じた印
象で、一番多かったのは
33%で「おしゃれ」だっ
た。街の雰囲気と演出し
ている緑をぶち壊しに
しないよう なモノク
ロ系の色合いのものが
17%
33%
50%
図1-5 緑の量(N=45)
1 2 3
うっそうとしている
おしゃれ
おちついている
シック
シンプル
ポップ
モダン
開放的
近代的
庶民的
0 10 20
図1-7 建物の雰囲気①(N=45)
28%
28%
44%
図1-6 建物の大きさ
(N=36)
普通 少し大きめ 大きい
多く、カラーの色合いのものはあまりみられなかった。次に多かったのが 18%の
「近代的」で、都市部である典型的な特徴がよく表れていたように思った。
図 1-8 は調査した建物
の雰囲気から感じた印
象を二つまであげ、グラ
フ化したものである。こ
れは二つ目に感じた印
象で、結果は 20%で「シ
ンプル」が一番多かった
が、それ以外は 10%前後
とわかれていることが
わかる。しかしながら、
図 1-7 と図 1-8 からトー
タルで考えてみると、緑
と建物・街とでバランス
よく調和できるように
つくられているのでは
ないかと思った。
おしゃれ
かわいらしい
シック
シンプル
ポップ
モダン
近代的
芸術的
親近感を感じる
清潔感
洗礼されている
緑が比較的少なめ
緑多い
和
0 2 4 6
図1-8 建物の雰囲気②(N=25)
4.建物と緑の因果関係―一次調査クロス集計から―
図 1-9 は建物の大きさと植物の量をグラフにしたものである。数字は 1~3 の 3
段階評価で、大きくなればなるほど植物の量は少なくなることを表している。な
お、今回の調査では建物以外の場所(十字路など)も調査しているため、建物の
大きさとのクロス表では建物以外の場所でのデータは除いて集計している。グラ
フを見てみると、「1.多い」は「大きい」のグラフが 5 と最も多いことがわかる。
そして、「3.少ない」は「普通」と「少し大きめ」と集計結果が同じであること
がわかる。建物の大きさに伴い量も多くなるのではないかという仮説は立証され
たように思うが、予想より少なかったため、もう少し調査する余地がありそうだ。
※横列の1~5は 1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植
1.多い 2.普通 3.少ない
普通 4 4 12
少し大きめ 1 10 12
大きい 5 10 18
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
図1-9 建物の大きさと植物の量(N=45)
1 2 3 4 5
普通 2 6 12 5
少し大きめ 2 8 12 5
大きい 10 12 16 15
0
5
10
15
20
25
30
図1-10 建物の大きさと植物の大きさ(N=45)
物とない植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみとする。
図 1-10 は建物の大きさと植物の大きさをグラフにしたものである。植物の大き
さの数字は 1~5 の 5 段階評価で、数字が大きくなればなるほど背丈ありの植物
が多いことを表している。全体的にみると、「普通」から「大きい」ものまで、全
ての段階において背丈ありとなしの植物がバランスよくあるような印象が受けら
れるが、「大きい」を見てみると「1.背丈のない植物のみ」が一つもないことが
わかる。今回調査した場所は比較的高級住宅街というイメージが強く、全体的に
背丈なしの植物のある家が少なかったことが少なかったが、やはり大きい家には
少なからず背丈のある植物が植えられていることが多いといえるのかもしれない。
図 1-11 は建物の大きさと植物(大)の比率をグラフにしたものである。植物の
比率は、一軒につき植えられている植物の大きさを大:中:小で調査し、そのう
ちの大の比率をグラフにしたものである。なお、一軒につき大~小まで合わせて
10 割になるように計算をし、調査を行ったため、0 だった場所もある(大だけで
なく中と小も該当する)。グラフを見てみると、「少し大きめ」と「大きめ」とが
1~9 割まで幅広くみられ、「普通」はあまり見られないことがわかる。「普通」に
「大」の比率があまりみられないのは、家の大きさとのバランスを考えてのこと
だと考える。
家の大きさを考えなければ、植物の大きさばかりに目がいって肝心の家が隠れ
てしまうこともありうるだろう。
0 1 2 3 4 5 6 7 8
1
2
3
4
5
6
7
8
9
1 2 3 4 5 6 7 8 9
普通 3 2 1
少し大きめ 1 2 1 1 1 1
大きい 2 1 2 3 1 1 1
図1-11 建物の大きさと植物の比率(大)(N=24)
図 1-12 は建物の大きさと植物(中)の比率をグラフにしたものである。「中」
は今回の調査では、4 ページ目にある写真にある塀に横に沿って植えられている
植物を指す。写真をみてもあるとおり、「中」は場所をかなりとるため、ブロック
などのような塀がしっかりしている建物でないとなかなかないように思われる。
そのため、先ほどの図1-11とは対照的に3~6割の間のみと少ないことがわかる。
しかしながら、植えられている場所のほとんどは少なすぎず多すぎずのちょうど
の量の比率がどこの調査場所でも共通してみられた。
図 1-13 は建物の大きさと植物(小)の比率をグラフのしたものである。「小」
は「大」や「中」ほどスペースをとらず、どんな建物の大きさでもバランスがよ
くなり、庶民的な人でも小さいものなら植えやすいのではないだろうか。図 1-11
0 1 2 3 4 5
3
4
5
6
3 4 5 6
普通 2 2 2
少し大きめ 1
大きい 1 2 2
図1-12 建物の大きさと植物の比率(中)(N=36)
0 1 2 3 4 5 6
1
2
3
4
5
6
7
8
1 2 3 4 5 6 7 8
普通 1 2 1 1
少し大きめ 2 2 1 2 1 1
大きい 1 2 2 3 3 1 1
図1-13 建物の大きさと植物の比率(小)(N=27)
と比較すると全体的に多くなっていることがわかる。特に「大きい」は全体的に
多くみられることがわかる。「大」や「中」と比べると「小」ほどの大きさは手に
入りやすく、植えやすいという点から考えると多いのも納得できるのかもしれな
い。一方、「普通」は図 1-11~1-13 まで全体的にあまりみられないことがわかる。
「普通」はさほど大きさがないことに伴って植えられている植物も少ないのかも
しれない。
5.一次調査まとめ―緑を通してわかった街の特徴とは―
岡本
街の雰囲気・人・車
・学生が多い。
・大学前の通りでは家:緑の比率が 7:3 のところが多く、植物のない建物は
ほとんどない。
・大学前の通りでは日本車がよくみられ、外車がときどきみられる。しかし、
園田医院付近まででると外車がよくみられるようになった。
・岡本 8 丁目の交差点を通り過ぎると、植物の割合が多く、植物の背丈の低
い家が多く見られた。
・上品な人がよく見られた。
イメージ
家:緑の比率が 7:3 のところが多く見られた。建物自体もおしゃれなものが
多く、岡本は上品な街で高級な、落ち着いた雰囲気が出ているのではないか
と思う。
ポートアイランド
街の雰囲気・人・車
・日本車で静かなものが多かった。
・家族連れがたまに見られる。
・大学前の通りでは特にトラックがみられた。
・街全体的に緑がかなり多く、建物はあまり見かけない上の人もほとんどい
ない。
・角を曲がったところの通りでは、工場らしきものが多かった。
・三宮方面に歩けば歩くほど建物が多くなり、緑は若干ではあるが少なくな
っていった。
イメージ
予想としては、六アイがベッドタウンで高級であるというイメージが強いこ
とから、ポーアイも同じではないかと考えたが、そうでもなく、ポーアイは
住宅よりも商業的な工場が比較的多くみられ、高級というほどではなかった。
私が調査した場所では緑がかなり多く見られたように思う。
六甲アイランド
街の雰囲気・人・車
・子連れがよく見られた。
・車がよく通っていた。
・コンビニ前の路駐が目立った。
・大学生のみならず、中高生などといった学生もよく見られた。
・甲南大施設に近づけば近づくほどトラックがよく見られた。
イメージ
海側に近づけば近づくほど街中の洗礼されたおしゃれな雰囲気とは対照的に
物寂しく、少し怖さも感じた。時間帯も大きく関係はしているのかもしれな
いが、ロマンチックな雰囲気づくりには緑の有無も多少はあるのではないか
と思った。
6.一次調査結論―今後の方向性―
実際に調査をしてみると、調査範囲を限定させることがどれだけ重要なことか
がわかった。掲載している地図はスマートフォンからとったものだが、次回以降
は地図に加えて番地名などといった住所も明確に記載したほうがよいと感じた。
緑に対する調査は今回の感じでも大丈夫だと思うが、調査場所の範囲を限定する
方法が今後の課題となるだろう。また、クロス集計では「建物の雰囲気」ともグ
ラフを作りたかったが分類が今回あまりにも多くなってしまったため、割愛した。
次回以降の調査では、集計のしやすさを考えると自由記入よりも「建物の雰囲気」
にも最大でも 5 段階まで評価を作り、分類する必要があるかもしれないと感じた。
加えて、次回以降の調査では道毎ではなくエリア毎で調査したほうがよいだろう。
それぞれの街のまとめは似たような感じになってしまったが、同じ高級な雰囲気
のある街並みでも、建物そのものが隠れるほど植物を植えていたり、島ならでは
の高さの建物が見られたりと若干ながらそれぞれ特徴が見られたようにも感じた。
同じ人工島でも六アイとポーアイとで雰囲気が違うことが面白かった。
7.二次調査仮説―街をつくりだす“もの”とは
街にはイメージがつきものである。しかし、イメージも典型的な下町の代表格と
いわれる街からブランド力を誇るといわれる街まで多様にある。街に対するイメー
ジの点で考えると、「スーモ」にて住みたい街ランキングに入っていた上位 5 位以内
の街は、兵庫県内でも神戸市内の街であったり、阪急神戸本線の沿線の駅が多く入
っていたりと、北部より南部の神戸市を中心とした地域のほうが多く見られた。兵
庫県は範囲が広いにも関わらずなぜ南部の地域、それも神戸市や西宮市の人気が高
いのだろうか。
理由として、私は「街と緑の調和」が挙げられると考える。一見すると、街並や
街の人気の形成に緑が介入するのは無関係なように感じるが、人と緑は密接なもの
である。酸素を作り出している等といった科学的な部分はもちろんのことだが、心
身の癒しをも緑が介入しているというのだ。林真一郎によると、「各種のハーブや精
油には、抗菌作用のほか、自律神経やホルモンの調整作用、免疫能を高める働き等々
があることが確認されている。このことから、メディカルハーブは、感染症や生活
習慣病の予防から心の癒しなどにも効果が期待でき、実際に世界各地の医療現場な
どで広く導入されている」例があるという(22 頁、3-6 行目)。このことから、ラ
ンキングに入っている街には緑が比較的多くみられるのではないかと考えられる。
下町や高級な街と、街に対しさまざまなイメージが形成されているが、理由とし
て、「街全体でみられる緑の量」が指標になるのではないかと考えられる。というの
も、高級な街の代表例として「岡本」や「西宮」が挙げられるが、それらには街並
や住人はもちろんのことだが、なによりも緑が街の至るところにみられ、それも街
とバランスよく調和できているのではないだろうか。一方で、下町の代表例として
「塚口」や「尼崎」が挙げられる。もちろん、街並も関係がないわけではないが、
先ほど挙げたふたつの街と比較すると緑があまりみられず、背の高い植物が頻繁に
みられるという印象も薄い。そして、下町にも高級な街にも分類しにくい「三宮」
が例として挙げられるが、こういった街はむしろ三宮に限らず多く存在するだろう。
このような街は、緑も時々見られるのだが、街とのバランスがうまくとれず、緑よ
り街並の印象が勝っていることが原因のひとつに挙げられるのではないだろうか。
以上の「街と緑の調和」と「街全体でみられる緑の量」のふたつを今回の調査仮
説とし、観察調査を中心に行っていく。
8.二次調査概要
二次調査場所
住宅・不動産情報サイト「スーモ」の「住みたい街ランキング 2015 関西」で「居
住府県別ランキング(兵庫県)」と「穴場ランキング」に入っていた地域から阪急岡
本駅・阪急神戸三宮駅・阪急岡本駅・阪急塚口駅・JR 尼崎駅の計 5 つに絞る。なお、
調査範囲は次ページにある赤い丸に囲まれている範囲内で調査を行う(次ページ参
照)。
※上列:左から阪急岡本駅・阪急神戸三宮駅・JR 尼崎駅の地図。
※下列:左から阪急塚口駅・阪急西宮北口駅の地図。
(Google マップより引用)
二次調査日時
2015 年 11 月 13 日(金) 14:48~16:09
2015 年 11 月 17 日(火) 15:15~17:05
2015 年 11 月 18 日(水) 11:19~13:52
2015 年 11 月 20 日(金) 15:07~16:42
2015 年 11 月 24 日(火) 15:01~16:52
二次調査項目
調査地域
調査日時
時間帯
天候
植えられている植物の割合 ―大・中・小合わせて 10 割になるよう比率を記入する
植物の大きさ ―植物の背丈の高低、どんな大きさの植物が多いか 5
段階で判断
→1.背丈のない植物のみ
2.背丈のない植物多し
3.背丈のある植物とない植物半々
4.背丈のある植物多し
5.背丈のある植物のみ
植物の植えられている量 ―外観に植えられている植物の量の多さを 3 段階で判
断
→1.多い ―家を囲むように植えられている
2.普通 ―外観にも植えられているのが見られる
3.少ない―数えられる程度で、外観にまでは植えられているのが見られない
植物のある建物の住所 ―調査対象の建物の住所として「丁目」を記載する
改札口 ―調査対象の駅のどちら側の改札を調査したか記載す
る
植物のある建物の種類や場所― 一軒家やマンション・公園・お店など
家の大きさ ―最初にみた印象から大きいかそうでないかを判断
家の雰囲気 ―外観の雰囲気を一次調査の結果を元に 5 段階で判断
→1.おしゃれ
2.近代的
3.落ち着いている
4.庶民的
5.シンプル
住人の雰囲気 ―10 人調査したのち、上品なマダムタイプの人が多い
か庶民的な家庭的な人が多いかを総合で判断
車 ―外車が多いか日本車が多いか
二次調査方法
阪急岡本駅・阪急神戸三宮駅・阪急西宮北口駅・阪急塚口駅・JR 尼崎駅の調査場所
のところで地図で表記した赤丸の範囲内でそれぞれ 15~20 箇所調査を行う。
1
2
2
6 4 4
83
6 3 3
3
4
8 4
8
15
15
10
5
10
12
6
6
6
12
21
8
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-1 緑の割合(大)(N=100)
1 2 3 4 5 6 7 8
写真 11
神戸市東灘区
岡本 1 丁目
2015.11.13
筆者撮影
9.緑からわかるそれぞれの街並―二次調査地域別集計より―
※棒グラフの上に記載されている数字は「大」の割合を意味し、1~8 割まであった。
図 2-1 は 5 ヶ所の調査地別の緑の割合をグラフにしたもので、こちらは大・中・
小のうちの「大」をグラフにしたものである(なお、「大」は、写真 11 のようなも
のを主に「大」とする)。どこの調査地も共通して多くみられたのが「5 割」で平均
11%となった。特に、岡本と尼崎が 5 割の割合のデータが「15%」と同率で最も多
いのは驚いた。一方、尼崎・三宮・塚口・西宮北口での「大」の緑の割合が平均的
に 3~6 割の間でよくみられたのに対し、岡本は 1~8 割までデータ数に幅はあるも
ののバランスよくみられた。加えて、他の調査地にはみられなかった 7~8 割のデー
タがあり、それぞれ 7 割は 21%、8 割は 8%と意外と多かった。岡本は大通りらし
い道が少なく、車一台通るのがやっとな道幅が多いのに対し、他の調査地は大通り
らしい道が岡本と比較して多く、二~三台以上通れる道がよくみられた。この車通
りの環境が緑の割合を形成しているうちのひとつなのかもしれない。
(上)写真 12 阪急三宮駅前
(下)写真 13
JR 三ノ宮駅前
2015.11.18
筆者撮影
写真 14
尼崎市 3 丁目
2015.11.17
筆者撮影
※棒グラフの上に記載されている数字は「中」の割合を意味し、1~8 割まであった。
図 2-2 は 5 ヶ所の調査地別の緑の割合をグラフにしたもので、こちらは大・中・
小のうちの「中」をグラフにしたものである(なお、「中」は写真 13・14 のような
ものを主に「中」とする)。先ほどの「大」とは違った結果となり、どの調査地も共
通して多くみられたのが「3 割」で平均 6.6%となった。「大」のときに多かった 5
割は岡本と西宮北口でしかみられず、西宮北口が 30%と 6 倍もの差をつけて圧倒的
な多さをみせた。このようなデータが目立ったのは、西宮ガーデンズをはじめとし
た商業的な要素をもちつつ落ち着いた街並の印象が強かったことがいえるのではな
いかと考える。そして、尼崎と三宮とで 7 割以上が 7~8%という結果となった。庶
民的なイメージのある尼崎と若者に人気のある商業的な街である三宮とで一見なん
の共通点もないように思うが、どちらも車通りが多く、車線を区切る線のようなと
ころに写真 9 のような緑が比較的多くみられたのだ。意外なところで街並の形成に
貢献していたことがわかったように思った。
5 2 1
7 6
6
2 8
10
6
9 24
12
9
3
4
16
8
16
165
6
7
8
16
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-3 緑の割合(小)(N=100)
1 2 3 4 5 6 7 8
4 6
32
4
10
69 3
3
6
12
4 8
4 12
4
5
30
6 6
187 8
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-2 緑の割合(中)(N=100)
1 2 3 4 5 6 7 8
※棒グラフの上に記載されている数字は「小」の割合を意味し、1~8 割まであった。
図 2-3 は 5 ヶ所の調査地別の緑の割合をグラフにしたもので、こちらは大・中・
小のうちの「小」をグラフにしたものである(なお、「小」は写真 15 のようなもの
を主に「小」とする)。このグラフでどの調査地も共通して多く見られたのが「4 割」
で平均 12%となった。そして、「3 割」も比較的多くみられ、平均は 11.4%と先ほ
どの 4 割と僅差の結果となり、最も多くみられたのが尼崎でそれぞれ 3 割 24%、4
割 16%となった。「はじめに」や「仮説」では、塚口と尼崎は下町の典型例とされ、
下町と呼ばれる場所ほど街全体でみられる緑があまりみられないということを言っ
たが、この図から考えるに、緑があまりないというよりも、緑の割合の大・中・小
のうち、「小」が 3~4 割と双方共に最も多く見られた点からいうと、あまり目立た
ないものが多くみられることが下町と呼ばれる理由のうちのひとつともいえるので
はないだろうか。
図 2-4 は 5 ヶ所の調査地別でみられた緑の大きさを 5 段階で評価し、グラフにし
たものである(1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植
物とない植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。最も多かった
のが 4 と 5 を足して 58%となった「西宮北口」と意外な結果となった。私の予想と
しては岡本が一番多くなるのではないか思ったのだが、住みたい街ランキングで一
位を獲得していることに加えて岡本と同じく高級な街というイメージがもたれてい
ることを考えると、最も多い結果となっても納得はできるのかもしれない。反対に、
最も少なかったのは足して 23%となった「尼崎」だった。しかし、塚口や三宮は
40%代と決して少なくはないのだが、背丈のある植物(4・5)とない植物(1・2)
を比率で表わすと、高級な街とイメージされている岡本・西宮北口がそれぞれ 3:1、
5:1 となるのに対し、塚口や三宮は 2:1 となった。この可も不可もない丁度よい
バランスこそが高級な街並であるかないかのイメージ形成につながるのではないだ
ろうか。
5 4 2 16
8 12 12 10
12
18
3
3
36
8
20 28 48
20 15 20 20
10
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-4 緑の大きさ(N=100 )
1 2 3 4 5
図 2-5 は 5 ヶ所の調査地別でみられた緑の多さを 3 段階で評価し、グラフにした
ものである(1.多い 2.普通 3.少ない)。このグラフで最も多かったのは岡本
で 9%となり、次に多かったのは西宮北口で 8%となった。反対に、最も少なかった
のは尼崎と塚口で同率 30%となった。岡本も西宮北口も「多い」割合が 10%弱と
決して多くはないが、3 の「少ない」が双方とも 10%前後であることを考えると、
倍以上もの差がある尼崎と塚口はやはり下町のイメージ形成がますます強くなるだ
ろう。一方、三宮も 24%と尼崎や塚口とさほど変わらない。緑の割合といい量とい
い、ここまでのデータをみると下町のイメージをもたれてもおかしくない気がする
が、街並との調和に理由があるのだろうか。
図 2-6 は 5 ヶ所の調査地別でみられた建物の大きさをグラフにしたものである。
岡本・尼崎・塚口・西北がそれぞれ「小さい」の項目があり、平均 4%あるのに対
し、唯一三宮が「小さい」の項目がない。今回調査した周辺の街では商業ビルが目
立ったことも要因のひとつとしても挙げられるが、他の調査地のような住宅街はみ
られず、大きさのある建物が目についたことからこのような結果となったのではな
いだろうか。また、塚口の「7%」はこのデータ結果では最も多く、調査中も三宮と
9
5 5
8
14
10
14
20
18
12
30
24 30
9
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-5 緑の量(N=100)
1 2 3
1
4
7
4
9
5
6
8
5
10 9 8
3
6
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-6 建物の大きさ(N=100)
小さい 普通 大きい
は対照的に住宅街が目立ったことに加えて大きさのある建物もほとんどなかったこ
とからこのような結果となったのではないだろうか。
図 2-7 は 5 ヶ所の調査地別でみられた建物の雰囲気を 1 次調査の結果を基に 5 段
階で評価し、グラフにしたものである(1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いてい
る 4.庶民的 5.シンプル)。「庶民的」が岡本で 16%もあったのは意外な結果だっ
たが、「おしゃれ」の項目が 10%というのはイメージ通りといったところだろうか。
同様に西宮北口も 11%を保っており、「庶民的」という項目がないのは興味深かっ
た。そして、三宮は 8%とこのデータ結果では 10%をきっており、「近代的」が 14%
と最も多かったのはやはり近代的な街並とほどよい割合の緑とがうまく調和してい
るが故の商業的であるというイメージ形成につながるのではないだろうか。そして、
尼崎と塚口の「庶民的」が 20%以上という結果には納得である。
この地域別集計では、今回調査した岡本・尼崎・三宮・塚口・西宮北口を、地域
別に分けて集計を行ったが、住宅街の目立つ岡本と商業施設が目立つ三宮とで同じ
緑でも街並ひとつで演出のされ方が違って見えるように感じた。岡本は街とうまく
融合するように比較的背の高い植物が多く見られたが、三宮では建物を引き立たせ
るために植物の背は低いものの量が多かったような印象だった。また、同じ「典型
的な下町の代表例と呼ばれている尼崎と塚口では、データでは緑でも量も少なく大
きさも小さいものが目立ち、街並も「庶民的」で素朴に思わせるような感じである
とでたが、尼崎のほうは車通りの多い箇所が目立ち規模の大きさがみられた一方で、
塚口は車よりも自転車通行の人が老若男女問わず 5~6 人中 1 人の割合で今回の調
査では最も多くみられた。そのため、親近感を感じさせるという点では塚口のほう
がより強く感じられた。そして、西北だが、岡本と同じくして「高級」と言われて
いるが、大きさのある住宅を見たわけでも背の高い植物を多く見たわけでもなく、
10
2 3 6
11
2
4
14
2
8
6
15
12
15
12
16
24
8 20
15 25 20
15
5
岡本 尼崎 三宮 塚口 西北
図2-7 建物の雰囲気(N=100)
1 2 3 4 5
出口毎で同じ街のはずがなぜか違う顔を持っているような錯覚におちた。特に「高
級」と言われていることに納得をしたのは、駅の南側にでたときで、そこでは大き
なショッピングモールや近代的な博物館をはじめとした大きな建物がみられたのは
もちろんのこと、街の至るところにある緑が華を添えるように規則正しくも大小さ
まざまな大きさの植物があった。緑が街といかに調和し、引き立たせているかどう
かが気になる結果といえるだろう。項目別集計からは、地域別集計の結果から、庶
民的な街で「尼崎・塚口」・高級な街で「岡本・西宮北口」・商業的な街の「三宮」
の三つに分類し、集計を行うものとする。
10.街との調和からみる「緑」のたち位置―二次調査項目別集
計より―
地域別集計では、地域毎で比較して緑から街までさまざまなデータをみてきたが、
ここでは「岡本・西宮北口」・「尼崎・塚口」・「三宮」の高級・庶民的・商業的の三
つに分類し、順にそれぞれの集計結果をみていこう。一カ所につき 20 個のデータを
とっているため、これ以降の合計はすべての地域を合わせたものではなく、最大で
二つの地域を合計したものを表すものとする。なお、合計の個数の最大値は 40 とな
る。そして、三宮については集計や分析を三宮のみで行うため、この合計の個数の
最大値は 20 となる。
図 2-8 は、建物の大きさと、緑の割合の大・中・小のうちの「大」を掛けあわせ
て集計したものである。なお、このデータで「建物・場所」において「タクシー乗
り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表しているが、
建物の大きさが「大きい」の項目の列と「普通」の項目の列は 1 割から 8 割まで全
体的にバランスよく分かれていることがわかる。「大きい」は平均約 6.9%・「普通」
は平均約 6.4%と、意外にも建物の大きさにおいて大きいのと普通くらいとで大き
く差は開かない結果となった。一方で、「小さい」の項目の列は 2 割で 2%・5 割で
5%しかないことがわかる。平均も 3.5%と他二つの項目と比較すると圧倒的に低い
ことがわかるが、図 2‐6 で、他二つがそれぞれ 10%前後だったのに対し、岡本の
「小さい」における割合は 1%にしかならなかったことを考えると、このグラフに
おいても「小さい」の平均が「大きい」と「普通」の二つの平均値よりもおよそ 2
分の 1 のデータになっても納得はできるのではないだろうか。
1 2 3 4 5 6 7 8
大きい 2 4 3 5 12 14 8
普通 1 6 3 12 10 6 7
小さい 2 5
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-8 建(大)×割(大)-岡本・西北(N=35)
図 2-9 は、建物の大きさと、緑の割合の大・中・小のうちの「中」を掛けあわせ
て集計したものである。なお、このデータで「建物・場所」において「タクシー乗
り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表しているが、
割合が低くなった途端に割合数が最大でも 6 割まででおわっていることがわかる。
「大きい」と「普通」においてデータが集中しているのは、主には 3 割・5~6 割の
間の部分で、それ以外は「小さい」の項目が多いように感じる。割合において「中」
とされている緑の主な特徴は、縦の大きさはあまりなく、横幅がとても広いという
ことである。このことから考えると、調査当時は 6 割でも調査対象の建物がすこし
見えにくいという印象が確かにあった。これが 7 割以上になると、建物がますます
見えにくくなり、通りかかる人に気味悪がられてしまう恐れがあるのではないだろ
うか。よって、5 から 6 割の間という、割合数においても多くもなく少なくもない
とされる数字が、建物の大きさに対してもちょうどよいとされるのではないだろう
か。
1 2 3 4 5 6
大きい 2 12 10 12
普通 6 20 6
小さい 3 3 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-9 建(大)×割(中)-岡本・西北(N=35)
1 2 3 4 7 8
大きい 5 4 9 16 7
普通 4 2 3 8
小さい 1 2 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-10 建(大)×割(小)-岡本・西北(N=35)
図 2-10 は、建物の大きさと、緑の割合の大・中・小のうちの「小」を掛けあわせ
て集計したものである。なお、このデータで「建物・場所」において「タクシー乗
り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表しているが、
割合において「大」や「中」と比較すると「小」は縦にも横にも場所をとらないた
め、図 2‐8 で「大」と掛けあわせたときと同様に 1 割から 8 割まで幅広くデータ
が分散されているのではないかと予測していたが、意外にも 5 割以下とそれ以上の
みという、多いか少ないかという極端ともいえる結果がでた。しかし、ここでおも
しろいと感じたのは、「小さい」の平均約 2.3%・「普通」の平均約 4.2%ときて、「大
きい」の平均が 8.2%と、他二つとは 2 倍以上もの差をつけ、グラフをみても「大
きい」がどれだけ占めているかがよくわかる。とはいえ、データの分散の程度に差
はあるものの、大きいから小さいまでデータの平均値が二乗していっているような
結果となったのはおもしろかった。
図 2-11 は、建物の大きさと緑の大きさを掛け合わせて集計したものである(横
列:1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植物とない植
物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。なお、このデータで「建
物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。岡本
と西北での緑の大きさの調査結果に「背丈のない植物のみ」という結果はないこと
がわかる。そのため、今回調査したいずれの建物や場所では、駅周辺にある街は、
建物の大きさにかかわらず必ず背丈のある植物はあるということがいえるだろう。
元々データの少ない「小さい」という項目さえも背丈のある植物が多いか、背丈の
ある植物しかないという結果がでているというのには驚きである。このデータでは
4 の「背丈のある植物多し」という項目が最も多いことを考えると、背丈のある植
物とない植物とでバランスをとり、街並を演出しているという意味では、落ち着い
た街並も感じさせる高級な街ならではといってもいいのではないだろうか。
2 3 4 5
大きい 6 9 36 5
普通 6 3 28 15
小さい 2 8 10
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-11 建(大)×緑(大)-岡本・西北(N=35)
図 2-12 は、建物の大きさと緑の量を掛け合わせて集計したものである(横列:1.
多い 2.普通 3.少ない)。なお、このデータで「建物・場所」において「タクシ
ー乗り場」と分類されたものは除くものとする。「大きい」と「普通」は僅差ではあ
るものの、いずれも「2.普通」でそれぞれ 14%・10%と多いことがわかる。ここ
で意外だったのは、建物の大きさにおいて、大きいものも普通くらいのものも「1.
多い」と「3.少ない」とのデータが 1%しか差がないということである。私として
は、図 2‐8 で出た「大きい」の平均約 6.9%・「普通」の平均約 6.4%というデータ
からも、量において「1.多い」のデータが伸びるのではないかと思っていたが、そ
こまで差がでず似通った結果におわった。そして、「小さい」という項目では他二つ
とは違い、「3.少ない」で 9%と最も多い結果となり、それ以外の項目では 1%前
後と圧倒的な少なさを見せた。
1 2 3 4 5
大きい 9 4 3 4 15
普通 7 2 6 12 5
小さい 4 3
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-13 建(大)×雰囲気-岡本・西北(N=35)
1 2 3
大きい 7 14 6
普通 7 10 6
小さい 1 2 9
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-12 建(大)×量‐岡本・西北(N=35)
図 2-13 は、建物の大きさと、建物の雰囲気を掛け合わせて集計したものである(横
列:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.庶民的 5.シンプル)。なお、
このデータで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除く
ものとする。岡本と西宮北口での調査において建物の大きさに関わらず多くみられ
たのは「1.おしゃれ」と「3.落ち着いている」となり、それぞれ平均が 1 は約 6.6%・
3 は 4%となった。高級な街と言われているだけに、おしゃれでおちついているとい
うのは私が抱いていたイメージと一致する。しかし、「庶民的」という項目が計 16%
もみられたのは意外だった。今回調査した場所では、駅から少し歩くと、ときたま
素朴な雰囲気の建物をみかけることがたしかにあった。高級な街に点在する素朴な
雰囲気の建物は際立つため、かえっていいのかもしれない。
図 2-14 は、建物の雰囲気と緑の割合の大・中・小のうちの「大」を掛けあわせて
集計したものである(縦列が建物の雰囲気で、横列が割合数)。なお、このデータで
「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。
このグラフにおいて最も多くみられたのは「1.おしゃれ」で平均約 9.1%となった。
一方で、「2.近代的」は平均 4%・「3.落ち着いている」は平均 4%・「4.庶民的」
は平均 8.5%・「5.シンプル」は平均 6%という似通った結果となったが、ここでも
「4.庶民的」は、平均値がおしゃれに次いで僅差で 2 番目に多いという意外な結果
となった。データの分散という点で考えると「庶民的」は 5 割と 7 割でしかみられ
ないが、それ以外の「近代的」や「落ち着いている」・「シンプル」もまた 2~3 つの
項目しかみられない。それを考えると「4.庶民的」が二番目に多いのは改めて驚き
であるが、おしゃれな家ほど緑の割合が多いということがいえるのではないだろう
か。
1 2 3 4 5 6 7 8
5 4 8
4 10 7
3 2 4 6
2 2 6
1 3 10 6 4 15 12 14
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-14 雰囲気×割(大)-岡本・西北(N=35)
図 2-15 は、
建物の雰囲気
と緑の割合の
大・中・小の
うちの「中」
を掛け合わせ
て集計したも
のである(縦
列が建物の雰
囲気で、横列
が割合数。)な
お、このデー
タで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとす
る。大・中・小のグラフの中で割合の数字の項目の幅が狭い「中」だが、こちらで
も「1.おしゃれ」の項目で平均 7.5%と多くみられ、特に 5~6 割が最も多いこと
がわかる。そして、「3.落ち着いている」は 3~6 割の間でよくみられ、平均約 5.8%
となった。とはいえ、こちらのグラフでも「2.近代的」・「4.庶民的」・「5.シン
プル」を含めて比較しても、おしゃれの項目が 1 割から 6 割まで全体的に幅広く分
散されている点においては、これは驚きというよりも説得力の増す結果となったと
いってもよいだろう。
図 2-16 は、
建物の雰囲気
と緑の割合の
大・中・小の
うちの「小」
を掛け合わせ
て集計したも
のである(縦
列が建物の雰
囲気で、横列
が割合数)。な
お、このデー
タで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとす
る。「小」のグラフでも全体的に「1.おしゃれ」が平均 7%という高さをみせた。
そして、同じことがいえるのが「2.近代的」・「3.落ち着いている」・「4.庶民的」・
「5.シンプル」のいずれも、おしゃれほどデータが分散されていないということで
1 2 3 4 5 6
5 6
4 6
3 3 4 10 6
2 3 10
1 3 2 9 4 15 12
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-15 雰囲気×割(中)-岡本・西北(N=35)
1 2 3 4 6 7 8
5 2 4
4 2 2
3 1 4 4
2 1 4 6
1 5 6 12 8 7 8
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-16 雰囲気×割(小)-岡本・西北(N=35)
ある。いうとすれば、これまで 3 割から 7 割まで割合的に多い数字の項目でもみら
れていたのがこちらのグラフでは「近代的」を除いて 4 割以下にしかみられなくな
っているということである。大・中×小という組み合わせが鉄板であるということ
を考えると、4 割以下にデータが集中してもおかしくはないのかもしれない。
図 2-17 は、建
物の雰囲気と
緑の大きさを
掛け合わせて
集計したもの
である(縦列が
建物の雰囲
気:1.おしゃ
れ 2.近代的
3.落ち着いて
いる 4.庶民的
5.シンプルで、
横列が緑の大
きさ:1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植物とない
植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。このグラフでは、「1.
おしゃれ」が 2~5 割の間で多くみられ、4 の「背丈のある植物多し」の項目では
44%と圧倒的な記録であることがわかる。4 と 5 の背丈のある植物における項目で
はどんな建物の雰囲気でも全体的に幅広くみられることがわかる。背丈のある植物
は建物の雰囲気を選ぶものだと思っていたが、岡本や西宮北口では意外にもそうい
うわけではなさそうである。
図 2-18 は、
建物の雰囲気
と緑の量を掛
け合わせて集
計したもので
ある(縦列が
建物の雰囲気
で、横列が緑
の量:1.多い
2.普通 3.
少ない)。こち
1 2 3 4 5
5 2 8 5
4 12 5
3 4 12 5
2 1 3 8 5
1 10 9 44 10
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-17 雰囲気×緑(大)-岡本・西北(N=40)
1 2 3
5 1 4 3
4 2 4
3 2 6 3
2 1 6 3
1 11 12 12
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図2-18 雰囲気×量‐岡本・西北(N=40)
らのグラフでは、量の多さに関わらず「1.おしゃれ」から「5.シンプル」までデ
ータが分散されていることがわかる。中でも目立ったのは「1.おしゃれ」で平均
12%と、平均値においては初の 10%代を記録した。これまで割合においても大きさ
においてもおしゃれの項目が群をぬいて目立ってきたことを考えると、当然の結果
ともいえるし、高級な街並はおしゃれな雰囲気であるというのが強くいえるのでは
ないだろうか。そして、「2.近代的」は平均約 3.3%・「3.落ち着いている」は平
均約 3.7%・「4.庶民的」は平均 3%・「5.シンプル」は平均約 2.7%と、全体的に
3%前後という差があまり開かないという結果におわった。
岡本・西宮北口では建物の大きさに対し、緑の割合は 3~6 割で背丈のある植物と
ない植物とが 6:4 で多すぎず少なすぎずの量が植えられているように感じた。また、
項目別集計でも量や大きさにかかわらず他の項目を抑えて圧倒的に多かったように
感じた。加えて、建物の雰囲気とそれぞれの緑に関する項目とかけあわせた際も、
いずれもおしゃれの項目が他の四つの項目を抑えて突出していたように思う。おし
ゃれな街を演出するためには 6:4 の比率が意外と大事なのかもしれない。
次は尼崎・塚口のデータ結果をみていく。
図 2-19 は、
建物の大きさ
と緑の割合の
大・中・小の
「大」を掛け
あわせて集計
したものであ
る。なお、こ
のデータで
「建物・場所」
において「タ
クシー乗り場」
と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表しているが、こちら
のグラフでは「大きい」は 3・4・6 割と大きさに比例して緑の割合も多く、「普通」
と「小さい」では、「普通」が 5 割で 5%いるものの、基本的に 1~3 割の間でみら
れることがわかる。調査時も大きい建物が目立った印象がなかっただけに、緑だけ
が目立ちすぎるとうっそうとしてしまい、結果的に暗い印象を与えてしまいかねな
いことを考えると 7 割以上もうえる訳にはいかないのではないだろうか。
1 2 3 4 5 6
大きい 6 8 6
普通 1 2 3 5
小さい 1 2
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-19 建(大)×割(大)-尼崎・塚口(N=36)
図 2-20 は、
建物の大き
さと緑の割
合の大・中・
小の「中」を
掛けあわせ
て集計した
ものである。
なお、このデ
ータで「建
物・場所」に
おいて「タク
シー乗り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表してい
るが、やはりこちらでも全体的にバランスよくわかれてデータがでているとはいえ
ず、多いか少ないかどちら一方が多いという印象をうける。このグラフでもいえる
ことは、やはり「小さい」の項目が目立つようになり、それも 1・3・4・6 割のと
ころでよくみられるのがわかる。岡本・西宮北口の総合分析結果は、建物の大きさ
に対して緑はあまり多すぎないほうがよいという結果だったが、尼崎・塚口では、
「小さい」の項目でも大きさの割には比較的多く植えられているのはないだろうか。
図 2-21 は、
建物大きさ
と緑の割合
の大・中・小
の「小」を掛
け合わせて
集計したも
のである。な
お、このデー
タで「建物・
場所」におい
て「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を
表しているが、これまで 5 割以上のデータがでていたことを考えると、緑が目立た
なかったという印象からいうと 4 割以下は意外なようにも思えた。しかし、「小さい」
の項目では偏りもなく全体的にみられ、平均 5.7%という結果となった。「大」や「中」
を掛けあわせたときも、割合数の項目の数字が多くても 5 割から 6 割前後までとい
う、比較的割合的には多すぎる量はほとんどないという分析結果がでたように思う。
1 2 3 4 6 7
大きい 1 4 3 7
普通 2 6 16
小さい 3 6 4 6
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-20 建(大)×割(中)-尼崎・塚口(N=36)
1 2 3 4
大きい 4 15 8
普通 1 12 12
小さい 1 8 6 8
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-21 建(大)×割(小)-尼崎・塚口(N=36)
したがって、比較的少ない割合のほうにデータが偏っていることが多いということ
は、地域別集計でも述べた「緑が目立たない」という考えがより一層深まったので
はないだろうか。
図 2-22 は建物の大きさと緑の大きさを掛け合わせて集計したものである(横列:
1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈のある植物とない植物半々
4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。なお、このデータで「建物・場
所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。「大きい」は
平均 6.6%・「普通」は平均 7.2%・「小さい」は平均 8.5%と、それぞれ 1~2%しか
差はなく、建物の大きさで大きく差がひらくという結果にはならなかった。唯一、
「3.背丈のある植物とない植物の半々」という項目だけが「小さい」にはみられな
い。小さい建物に対して背丈のある植物とない植物を同じ比率でうえようとすると
場所をとることに加えて、圧迫しかねないという点を考えると、比較的大きさのあ
る建物だけがデータとして表れたのではないだろうか。
1 2 3 4 5
大きい 3 4 12 4 10
普通 2 10 6 8 10
小さい 2 6 16 10
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-22 建(大)×緑(大)-尼崎・塚口(N=36)
1 2 3
大きい 2 6 21
普通 14 18
小さい 1 6 21
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図2-23 建(大)×量-尼崎・塚口(N=36)
図 2-23 は、建物の大きさと緑の量を掛けあわせて集計したものである。なお、こ
のデータで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くもの
とする。このグラフでは、「2.普通」が平均約 8.7%・「3.少ない」が平均 20%であ
るのに対し、「1.多い」は平均 1.5%と圧倒的に少ないことがわかる。これは、図 2-6
で「小さい」の項目が 4%と多くみられていたからなのか、量の多さによる差は今回
の調査ではほとんどないように思う。しかし、「3.少ない」は、建物の大きさに関わ
らず最も多い数字を記録し、平均 20%と、他二つの平均と比較しても 10 倍以上もの
差がついており、圧倒的に多いことがわかる。したがって、今回調査した尼崎・塚口
では、家の大きさに対し、比較的少ない量である 3~6 割となるようなバランスでう
えていることがいえるのではないだろうか。また、「3.少ない」の平均のデータ数が
20%代という、平均にしてはかなり多い数字を記録したことから、尼崎・塚口が庶民
的な街の典型例であるということに説得力が増したのではないかといえる。
図 2-24 は、建物大きさと建物の雰囲気を掛けあわせて集計したものである(1.お
しゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.庶民的 5.シンプル)。なお、このデータ
で「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。
岡本・西宮北口のときは「1.おしゃれ」と「3.落ち着いている」が目立ったが、尼
崎・塚口では、建物の大きさにかかわらず「4.庶民的」と「5.シンプル」が 1~3
と比較しても多いことがわかり、なかでも「庶民的」の項目で建物の大きさが「小さ
い」の項目のところでは 20%と最も多い。更に、「庶民的」も「シンプル」も平均が
約 13.3%という、平均値では 10%代という高い数字を記録したことからも、下町の
代表例といわれている尼崎と塚口には納得の結果といえるだろう。
1 2 3 4 5
大きい 4 4 6 8 10
普通 1 2 12 12 20
小さい 3 3 20 10
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-24 建(大)×雰囲気-尼崎・塚口(N=36)
図 2-25 は、建物の雰囲気と緑の割合の大・中・小の「大」を掛けあわせて集計し
たものである(縦列が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.
庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。なお、このデータで「建物・場所」に
おいて「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。このグラフでは、建
物の雰囲気においてどの項目も全体的にデータが分散されているということはなく、
「4.庶民的」の項目は 2・4~6 割という、比較的ちょうどよい割合の数字の項目で
よくみられ、「5.シンプル」は 2~3・5 割という、少ない割合の数字の項目でみられ
るという、建物の雰囲気によって緑の割合も異なるという結果となった。しかし、こ
の結果は今までにはあまりみられなかったため、興味深いデータとなった。また、「1.
おしゃれ」でも 1・3~4 割という「シンプル」同様に少ない割合の項目で見られたこ
とから、「大」という大きさのあるものの場合は、建物の雰囲気で割合による多さを
調整しているのではないかと思った。
1 2 3 4 5 6
5 2 3 5
4 2 4 5 6
3 1 10 6
2 3
1 1 3 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-25 雰囲気×割(大)-尼崎・塚口(N=36)
1 2 3 4 6 7
5 2 2 4
4 2 3 16
3 1 2 7
2 2
1 3 2 6 6
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-26 雰囲気×割(中)-尼崎・塚口(N=36)
図 2-26 は、建物の雰囲気と緑の割合の大・中・小の「中」を掛けあわせて集計し
たものである(縦列が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.
庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。なお、このデータで「建物・場所」に
おいて「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。こちらでもやはりデ
ータの偏りは目立ち、中でも 2 割の項目はいずれの建物の雰囲気も平均 2%と集中し
ていることがわかる。下町というイメージがある以上は、「2.近代的」という項目が
圧倒的に少ないのも納得はいくものの、建物の雰囲気と大きさを掛けあわせたときに
よくみられた「4.庶民的」と「5.シンプル」さえも 3 項目しかみられず、「庶民的」
の 4 割・16%を除いて、他が 5%未満のものが多いのには少し意外性を感じた。緑の
割合において「中」とされるものは横幅にスペースをとることから、緑の割合が少な
いというデータが現時点でもみられている尼崎・塚口ではあまりみられないのも納得
はできるのかもしれない。
図 2-27 は、建物の雰囲気と緑の割合の大・中・小の「小」を掛け合わせて集計し
たものである(縦列が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.
庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。なお、このデータで「建物・場所」に
おいて「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。このグラフでは、
「大」・「中」のときは多い割合か少ない割合かのどちらかで分散されていたのが、こ
のグラフでは、「4.庶民的」と「5.シンプル」という項目において全体的にバラン
スよくデータが分散されていることがわかる。「小」の縦にも横にも場所をとらない
というメリットを考えると、比較的簡素な雰囲気の建物では、建物とのバランスを考
えると割合が少ないほうが整合性はとれるのかもしれない。
1 2 3 4
5 1 2 3 8
4 2 2 6 12
3 1 18 4
2 6 4
1 8 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-27 雰囲気×割(小)-尼崎・塚口(N=36)
図 2-28 は、建物の雰囲気と緑の大きさを掛け合わせて集計したものである(縦列
が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.庶民的 5.シンプ
ルで、横列が緑の大きさ:1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈
のある植物とない植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。こち
らのグラフでもやはり「4.庶民的」と「5.シンプル」が安定して、大きさに関わら
ず全体的にバランスよくデータが表れていることがわかるが、それらと同じくらいに
よくみられるのが「3.落ち着いている」である。下町でのイメージとして、ここの
項目でいうと「庶民的」が主に挙げられるが、「落ち着いている」も、下町で親しみ
さえ感じてしまうという部分で考えると落ち着くというのは納得できるのではない
だろうか。また、大きさによるデータの差はみられず、全体的に似通った結果となっ
た。
図 2-29 は、
建物の雰囲
気と緑の量
を掛け合わ
せて集計し
たものであ
る(縦列が建
物の雰囲
気:1.おし
ゃれ 2.近
代的 3.落
ち着いてい
る 4.庶民的 5.シンプルで、横列が緑の量)。このグラフでは、「1.多い」のデー
1 2 3 4 5
5 2 2 3 8 10
4 1 6 9 8 10
3 3 4 6 8 5
2 1 2 3
1 6 12 10
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-28 雰囲気×緑(大)-尼崎・塚口(N=40)
1 2 3
5 8 12
4 3 8 12
3 2 6 15
2 4 3
1 4 18
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-29 雰囲気×量-尼崎・塚口(N=40 )
タ数が計 5%と、「2.普通」で計 30%・「3.少ない」で計 60%と双方を比較しても
圧倒的に少ないことがわかる。それでも、いずれの量にも「4.庶民的」の項目が入
っているのはさすがといったところである。やはり、先ほどそれぞれの緑の量におけ
る項目の合計の数字を挙げたが、「3.少ない」が 2 倍もの差をつけ、圧倒的に多いこ
とがわかる。したがって、尼崎・塚口では比率も量も緑が少ないことがいえると考え
る。
尼崎・塚口では、庶民的でシンプルなイメージがあがったり、どんなに緑が 5 割前
後のものがあろうとも建物に対する比率や量が少ないものが多かったりと、岡本・西
宮北口とは対照的な調査結果が表れた。これは、緑が比較的よくみられる高級な街と
は対照的に、下町では緑よりも建物のほうがよく目立っているということがいえ、緑
において、「多い」の項目よりも「少ない」の項目のほうが平均値でも 10~20%代を
記録したという点においても、きれいに対比として表れたのではないだろうか。
最後は三宮のデータ結果をみていく。
図 2-30 は、建物の大きさと緑の割合の大・中・小の「大」を掛けあわせて集計し
たものである。なお、このデータで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分
類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表しているが、建物の大きさ
において、今回の調査では「小さい」とされるような対象のものがみられなかったた
め、グラフの結果はシンプルなものになったが、「大」の項目においては 2~3 割の間
しかみられないという少ない割合が多いという結果となった。同じように、大きい建
物が目立った岡本・西宮北口とは対照的な少ない割合であるいう意外な結果となった
が、商業的な街が立ち並ぶ三宮の駅周辺という立地を考えると、人通りも必然的に多
くなってくると思われる街に、比率的にあまり大きいものが立ち並んでしまうと、大
×大という組み合わせは視覚的にも圧迫感を感じてしまうため、すっきりとした印象
を与えるという意味でも、このような結果がでたのではないかと思う。
2 3
大きい 2
普通 2 3
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図2-30 建(大)×割(大)-三宮(N=14)
図 2-31 は、
建物の大き
さと緑の割
合の大・中・
小の「中」を
掛けあわせ
て集計した
ものである。
なお、このデ
ータで「建
物・場所」に
おいて「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数
を表しているが、こちらでも 1~4 割とやはり5 割にも満たない項目ばかりが目立つ。
元々、この調査において横幅のあるものが「中」の主な特徴であるだけに、これまで
のデータ結果でも 3~6 割の間と、建物に対してそこまで多い割合がみられなかった
のは確かに事実である。それだけに、商業施設が立ち並ぶ街並では、あっても通り道
にあるオブジェの一部と化したものがほとんどだった。したがって、データにも差が
なく、比率が似たような結果になってしまったのもそのためだといえるだろう。
図 2-32 は、
建物の大き
さと緑の割
合の大・中・
小の「小」を
掛けあわせ
て集計した
ものである。
なお、このデ
ータで「建
物・場所」に
おいて「タク
シー乗り場」と分類されたものは除くものとする。横列の数字は割合数を表している
が、「大」・「中」のときは 5 割未満のデータばかりが並んでいたが、このグラフでは 5
割以上の項目がみられるのがわかる。それも「大きい」の項目が全体的に多いことが
わかり、割合は多いもので 8 割もみられる。大きい建物が立ち並ぶ街並のことを考え
ると、あまり多くないほうがよいのではないかという考えがよぎってしまうが、小さ
いものは建物の大きさに対してあまり主張されすぎないため、商業的な要素がメイン
1 2 3 4
大きい 2 6 3
普通 2 2 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-31 建(大)×割(中)-三宮(N=14)
2 3 4 5 8
大きい 2 6 4 5 8
普通 2 3 8
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-32 建(大)×割(小)-三宮(N=14)
の街並では都合がよいのかもしれない。
図 2-33 は、
建物の大きさ
と緑の大きさ
を掛けあわせ
て集計したも
のである(1.
背丈のない植
物のみ 2.背
丈のない植物
多し 3.背丈
のある植物と
ない植物半々
4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。なお、このデータで「建物・場所」
において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。大きい建物では比
較的、1・2 の「背丈なしの植物」が多く、普通の建物には 4・5 の「背丈ありの植物」
が多いことがわかる。とはいえ、三宮での調査時で「小さい」という項目がみられな
かったことに加えて、「2.背丈のない植物多し」以外の項目では「大きい」か「普通」
かのどちらか一方のみがデータ結果として表れているという偏った結果となってい
るため、一概にはいいきれないところはあるといえる。
図 2-34 は、
建物の大きさ
と緑の量を掛
けあわせて集
計したもので
ある。なお、
このデータで
「建物・場所」
において「タ
クシー乗り場」
と分類された
ものは除くものとする。「1.多い」は、商業的な街並のせいか、建物の大きさが「普
通」のもののみとなっているが、それ以外の「2.普通」と「3.少ない」とでは、比
較的「大きい」と「普通」とでバランスよくデータ結果として表れていることがわか
るが、「3.少ない」が「大きい」の項目で 18%となっているのは、緑の割合の「大」・
1 2 3
大きい 4 18
普通 2 4 6
0%
20%
40%
60%
80%
100%
図2-34 建(大)×量-三宮(N=14)
1 2 3 4 5
大きい 3 8 4
普通 4 3 15
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-33 建(大)×緑(大)-三宮(N=14)
「中」・「小」のうち「小」が最も多くみられたことを考えると納得のいくように思え
る。調査時のときも、緑より大きい建物が立ち並んでいる方が印象強かったことから
考えると、割合的にも量的にも少ないという結果はよくわかるように思う。
図 2-35 は、
建物の大きさ
と建物の雰囲
気を掛けあわ
せて集計した
ものである
(1.おしゃ
れ 2.近代的
3.落ち着い
ている 4.庶
民的 5.シン
プル)。なお、
このデータで「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くも
のとする。建物の雰囲気の項目の中唯一、「3.落ち着いている」の項目がない。それ
以外はどれも似たようなデータ結果となっているが、ここにきて、「2.近代的」のデ
ータが「大きい」と「普通」とでそれぞれ 6%と比較的多いことがわかる。同様にし
て、「5.シンプル」が「大きい」で 10%・「普通」で 5%と、こちらも多いことがわ
かる。シンプルかつ近代的な街並というのは、都会的な街並のイメージ像そのものを
連想させるキーワードといってもいいのではないだろうか。
図 2-36 は、
建物の雰囲気
と緑の割合の
大・中・小の
「大」を掛け
合わせて集計
したものであ
る(縦列が建
物の雰囲気:
1.おしゃれ
2.近代的 3.
落ち着いている 4.庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。なお、このデータ
で「建物・場所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。
1 2 4 5
大きい 2 6 4 10
普通 1 6 4 5
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-35 建(大)×雰囲気-三宮(N=14)
2 3 4 5 6
5 2 3
3 4 10 6
2 2
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-36 雰囲気×割(大)-三宮(N=14)
さきほどはみられなかった「3.落ち着いている」の項目が、このグラフでは 4~6 割
を占めている。一方で、「5.シンプル」が 2~3 割で平均 2.5%・「2.近代的」は 2
割のみでたったの 2%となった。建物の大きさを掛け合わせたグラフのデータ結果か
ら考えると、街並を壊さないためにも割合的に大きいものが比較的少ない項目が多い
のは納得できるのではないだろうか。
図 2-37 は、
建物の雰囲気
と緑の割合の
大・中・小の
「中」を掛け
あわせて集計
したものであ
る(縦列が建
物の雰囲気:
1.おしゃれ
2.近代的 3.
落ち着いてい
る 4.庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。なお、このデータで「建物・場
所」において「タクシー乗り場」と分類されたものは除くものとする。このグラフで
は、1~4 割まで「2.近代的」の項目が全体的にバランスよく分散されていることが
わかる。岡本・西宮北口や尼崎・塚口では、3~6 割の間でよくみられていたが、三宮
の場合は建物に対し 4 割以下の割合のほうが整合性をとれ、バランスもよくなるので
はないかと思う。
1 2 3 4 8
5 2 8
4 2
3 2
2 1 2 3 4
1 1 4
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-37 雰囲気×割(中)-三宮(N=14 )
1 2 3 4 5 8
5 2 3 8
4 3 5
3 1 2 4
2 2 6 4 8
1 2
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-38 雰囲気×割(小)-三宮(N=14 )
図 2-38 は、建物の雰囲気と緑の割合の大・中・小の「小」を掛けあわせて集計し
たものである(縦列が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.
庶民的 5.シンプルで、横列が緑の割合数)。このグラフでは、「2.近代的」のデー
タが比較的多くみられたものの、2~4・8 割の項目とトータル的には少ない割合の項
目に偏っており、バランスよく分散しているとはあまりいえない。特に、「1.おしゃ
れ」という項目は、2 割の項目にしかみられなかった。逆にいえば、どの雰囲気にお
いても、商業的な街並では、建物に対して小さいものであれば視覚的にもバランス的
にもすっきりした印象をもつのはもちろん、近代的な街並を引き立たせられるともい
えるのではないだろうか。
図 2-39 は、建物の雰囲気と緑の大きさを掛け合わせて集計したものである(縦列
が建物の雰囲気:1.おしゃれ 2.近代的 3.落ち着いている 4.庶民的 5.シンプ
ルで、横列が緑の大きさ:1.背丈のない植物のみ 2.背丈のない植物多し 3.背丈
のある植物とない植物半々 4.背丈のある植物多し 5.背丈のある植物のみ)。緑の
大きさにかかわらず、4・5 の「背丈のある植物」と 1・2 の「背丈のない植物」双方
で「2.近代的」がみられることがわかる。このグラフだけにいえることではないが、
都会的な街並を演出するための工夫として、背丈のある植物かない植物どちらかだけ
があればよいというものではなく、双方があることによって建物と緑のバランスがと
れるのではないかと思う。これが、商業的な街並である三宮を近代的に演出している
理由のひとつでもないだろうか。
1 2 3 4 5
5 1 2 4 5
4 1 2
3 12 5
2 2 6 3 5
1 2 4 5
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-39 雰囲気×緑(大)-三宮(N=20)
図 2-40 では、
建物の雰囲気と
緑の量を掛け合
わせて集計した
ものである(縦
列が建物の雰囲
気:1.おしゃれ
2.近代的 3.
落ち着いている
4.庶民的 5.
シンプルで、横
列が緑の量)。こ
のグラフでは、量に関わらず「2.近代的」が全体的によくみられるが、ここでもよ
くみられるのは、「2.普通」で計 14%・「3.少ない」で計 24%となった。やはり、
データ数において「1.多い」がよく見られたのは岡本・西宮北口のときで、それ以
外ではあまり多い量はみられなかった。理由は尼崎・塚口とは異なり、街並が近代的
で建物も多いことが目立つことが挙げられるが、それ以上に緑が三宮ではあまり目立
っていなかったことが大きくいえるのではないだろうか。
三宮では、高級な街でも下町でもないが、緑よりも近代的な建物のほうが目立ち、
それも大きさのあるものばかりであった。このことから、三宮に限らず、高級な街で
も下町でもないようなイメージのある街というのは、緑よりもおしゃれな建物のほう
に目がいき、緑のほうに関心がむけられていないためにどちらでもなく普通というイ
メージがついているのではないかという結論に至った。
1 2 3
5 1 6
4 6
3 2 4
2 2 4 9
1 9
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
図2-40 雰囲気×量-三宮(N=20 )
11.二次調査結論―街と緑がおりなす融合空間―
調査をするにあたり、調査仮説では「街と緑の調和」と「街全体でみられる緑の量」
を挙げたが、これまでの集計結果から考えると比較的仮説通りの結果となったといっ
てもよいのではないだろうか。というのも、「スーモ」にて住みたい街ランキングに 5
位以内に入っており、今回の調査対象にもなった岡本や西宮北口・尼崎・塚口・三宮
は、緑と建物との割合による違いはそれぞれで見られたものの、いずれもバランスは
うまくとれており、それが結果として街並の形成にも貢献し、住人にも相乗効果とし
てよい影響を受けているように感じた。
まず、高級な街の代表例として挙げられている岡本や西宮との緑の関係だが、こち
らは調査結果では緑の量が多く、大きさも割合も背の高い植物が全体的に目立った。
しかし、背の高い植物ばかりというわけではなく、それらに対しておよそ 3~4 割以
下くらいの割合で背の低い植物も同じように植えられていることがわかった。また、
緑において背の高い植物が多くみられたという背景からか、建物も同様にして大きさ
があるものが多く、建物自体もレンガ調であったり、クリーム色や赤茶色などといっ
た有彩色が基調としたデザインであったりと、おしゃれなものが多く、高級な街なら
ではといった建物が多かった。
次に、典型的な下町の代表例として挙げられている尼崎や塚口との緑の関係だが、
こちらでは先ほどの岡本や西宮とは対照的に背の高い植物は皆無に等しく、背の低い
植物ばかりがみられ、量自体も比較的少ないほうだった。しかしながら、尼崎や塚口
では大きさのあるマンションが多くみられ、建物の色合いも無彩色を基調としたもの
が多かった。建物自体はイメージするような典型的な庶民的な建物というのはあまり
みられなかったが、緑も同様に街全体としてみるとそれほど目立っていなかったとい
うのが、上記のように「下町」とよばれるのではないだろうか。
最後に、高級な街でもなく下町でもない、三宮と緑の関係だが、三宮でも量や大き
さに関わらず緑は岡本や西宮を調査したときと同じようにみられたため、目立ってい
ない訳ではなかった。しかし、それ以上に目立っていたのは建物であり、大きさも建
物の雰囲気も今回調査した四つとは大きくことなり、まさしく「近代的」で「都会」
な街並という言葉がぴったりだった。他四つは住宅街として分類される場所だが、三
宮は商業的な街に分類されるため、必然的に建物も大きいものが目立ったのではない
かと思う。やはり、そこでも感じたのは、そんな近代的な建物が立ち並ぶ街並と緑が
背の低い植物を基調として背の高い植物を 3~4 割以下くらいの割合でとりいれるこ
とで、街全体がアンバランスになることもなくきれいな街並として成立するのではな
いかと思う。
おわりに
今回の調査では、街並と緑という視点で調査を進めていったが、同様にして調査は
していたものの、住人については深く掘り下げることがほとんどなかった。分析とい
う点で考えるともう少し掘り下げてもよかったのではないかと考えたが、それ以上に、
緑と人というのは切り離せない関係であり、癒しをももたらすものである。だからこ
そ、住みたい街ランキングに毎回入っているような人気の街というのは、どんなに色
合いがあたたかくおしゃれなものであっても、建物だけでは窮屈で見苦しいものにな
りかねない。そんな人工物の中に、緑という自然物が街全体に対して 4~5 割前後の
割合でとりいれられているため、街並としてうまく形成されているものが多いのでは
ないかと思う。緑というのは、わたしたちが「街」の中で生活していくにあたって自
然と必要としているものではないだろうか。
参考文献・資料
林真一郎『植物力をくらしに活かす「緑の医学」』東京堂出版、2014.12/10 発行
「居住府県別住みたい街ランキング」
(住宅・不動産情報サイト スーモ「住みたい街ランキング 2015 関西」より)
http://suumo.jp/edit/sumi_machi/2015/kansai/kenbetsu/#hyogo
「みんなが気になる街ランキング」
(住宅・不動産情報サイト スーモ「住みたい街ランキング 2015 関西」より)
http://suumo.jp/edit/sumi_machi/2015/kansai/machi/
一次調査素データ表
N
o
日付 曜
日
調査地 時間帯 天気 大 中 小 大 量 建物・場
所
建大 雰① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
1 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴 2 0 0 5 2 大 学前
一軒家
普通 おし
ゃれ
モダ
ン
2 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
9 0 1 4 2 大 学前
一軒家
少 し 大 き
め
シッ
ク
近代
的
3 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
2 0 1 4 2 大 学前
一軒家
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
近代
的
4 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
5 5 0 3 1 大 学前
一軒家
普通 庶
民
的
5 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
7 0 3 4 1 大 学前
一軒家
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
シ
ッ
ク
6 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
6 0 4 4 1 岡 8・十
字路
× おし
ゃれ
7 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
0 6 4 2 2 岡 8・マ
ン ショ
ン
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
モダ
ン
8 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
1 0 2 2 3 岡 8 一
軒家
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
モダ
ン
9 8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
0 0 5 1 2 岡 8 一
軒家
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
和
1
0
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
5 5 0 3 1 岡 8 一
軒家
普通 庶
民
的
1
1
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
0 0 2 1 3 岡 8 一
軒家
少 し 大 き
め
おし
ゃれ
シ
ン
プ
ル
1
2
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
5 0 4 2 2 岡 8 一
軒家
少 し 大 き
め
シッ
ク
1
3
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
2 0 2 2 3 岡 7 一
軒家
普通 おし
ゃれ
シ
ン
プ
ル
1
4
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
0 0 3 1 3 岡 7 一
軒家
普通 モダ
ン
1
5
8/3 月 岡本 12: 10
~ 13:
07
晴
0 3 0 1 2 岡 7 一
軒家
普通 庶
民
的
1
6
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 3 7 2 1 キ ャン
パス
大きい 近代
的
1
7
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
5 0 5 3 1 キ ャン
パ ス横
道
× おし
ゃれ
緑
多
い
1
8
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
4 0 6 3 1 十 字
路・横断
×
大きい シッ
ク
1
9
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
7 0 3 4 2 十 字
路・横断
×
大きい シッ
ク
シ
ン
プ
ル
2
0
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
8 0 2 4 2 丁 字
路・横断
×
× おし
ゃれ
緑
が
比
較
的
少
な
め
2
1
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 5 3 3 3 港 4 大きい シ
ン
プ
ル
2
2
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
5 0 5 3 2 港 4 大きい シ
ン
プ
ル
清
潔
感
2
3
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 3 3 3 3 港 4 普通 シ
ン
プ
ル
2
4
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 4 6 2 1 十 字
路・横断
○
普通 おし
ゃれ
ポ
ッ
プ
2
5
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 5 0 5 2 十 字
路・横断
○
× 開放
的
2
6
8/9 日 ポ ーア
イ
13: 05
~ 14:
06
晴
0 4 6 2 2 丁 字
路・横断
○
大きい シッ
ク
近代
的
2015年度調査1 2次調査完成版(修正)
2015年度調査1 2次調査完成版(修正)
2015年度調査1 2次調査完成版(修正)
2015年度調査1 2次調査完成版(修正)

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