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後部座席タブレットにおけるMaaS時代を見据えた半歩先のUX設計」 [MOBILITY:dev]
- 12. なぜWi-Fi Direct + VPNなのか
12
「空車」や「実車」などのメッセージを乗務員端末から後部座席タブレットへ1対1で確実
に伝達する必要がある
Wi-Fi Directは元々ピア・ツー・ピアを前提とした仕組みなので都合が良い
設定は極力簡単にしたい
デザリングの場合「乗務員端末のアクセスポイントを探して、接続して、PINコードを入れる」必要があるが、
Wi-Fi Directの場合は「乗務員端末で接続したい後部座席タブレットを選択して、後部座席タブレットで承諾」す
るだけで接続可能
Wi-Fi Directでは通常のインターネット通信はできないので常時接続を諦めていたが…
Androidエンジニアのアイディアで「Wi-Fi Directの上にVPNを張る」というアイディアが生まれ、VPN部分を
独自開発することで常時インターネット通信を実現
- 20. まとめ:大事にしたいこと
20
半歩先 = 未来を行き過ぎても理解されない
公共性の高い交通サービスである以上「ちょっと新しい」くらいがちょうど良い。(まだ)理解されない機能は
入れない方が良い。
利益のバランスを保つ
例えば広告だけ表示する端末にすれば短期的には利益はあがる。事業である以上利益貢献しないといけないが、
提供側と受け手双方の利益のバランスを取る必要がある。
キープシンプル
移動中の車内では複雑な操作はさせないようにする。機能としてもシンプルに保つなど。
Hinweis der Redaktion
- みなさんこんにちは
DeNAの米山と申します。
AIとか機械学習とかの話を期待してご来場いただいた方にはたいへん物足りないセッションになるかも知れませんが、箸休め的なつもりで聞いていただければなと思います。
ちなみに資料を公開しようか迷ってるんですが需要があれば公開しますので、Twitterの#mobilitydevで公開して!ってつぶやいていただければなと思います。
どうぞよろしくおねがいします。
- 今日お話することは、技術の話は少しだけで、どちらかというとプロダクトよりのお話をさせていただこうと思っています。
MaaSとは移動のサービス化であるとよく言われるところだと思いますが、乗り物の中でどう過ごすかというところについてはあまり触れられていないのかなと思います。
本セッションでは移動中のユーザー体験はどうあるべきなのか、タクシー配車アプリ「MOV」の後部座席タブレットの事例でご紹介したいと思います。
- まず自己紹介です。
私は新卒で楽器メーカーに入社してDeNAが2社目です。
楽器メーカー時代にはWebよりのソフトウェアエンジニアとして、音響機器の周辺サービスや音楽制作ツール、音楽配信サービスなどの開発リーダーを行っていました。
DeNAに入社してからはAndroidエンジニアとしてエンタメ系アプリの開発を担当し、その後ライブ配信サービスのSHOWROOMの立ち上げから主に映像配信システムや映像周りのディレクションをやってました。
2年前にオートモーティブ事業本部に異動し、現在はハードウェア開発グループのマネージャーをしながら、後部座席タブレットのプロダクトマネージャーを担当しています。
- 本セッションは20分間となりますので要点を絞って、少し駆け足でお話したいと思います。
後部座席タブレットの概要
こだわりのポイント
今後実現したい車内のユーザー体験
をお話します。
- 3:00
まず、後部座席タブレットの概要です。
- 後部座席タブレットとは、MOV加盟タクシーの車内に搭載しているオリジナルハードウェアのタブレットです。
現在東京・神奈川中心に8,000台が搭載されていて、台数は順次拡大中です。まもなく関西地域でも御覧頂ける機会が増えると思います。
10インチの大画面に動画広告を配信することで、間接的な場合もありますが、タクシー会社様に還元する仕組みになっています。
また、コンテンツ配信機能やキャッシュレス決済機能など、車内のユーザー体験を便利にする機能も搭載しています。
- 機能について詳しくお話すると、大きく分けて4つの機能があります。
・まず広告配信機能
・シートベルト着用案内や料金案内などを行う、車内案内機能
・ニュースやリアルタイムな交通情報を提供する、コンテンツ配信機能
・キャッシュレス決済機能
です。
いずれの機能も日本語・英語・韓国語・中国語に対応しています。
- この後部座席タブレットは、飛行機のエンタテインメントシステムを参考に開発しました。
飛行機の座席に取り付けられているディスプレイで、
・離陸前は救命胴衣や非常口の案内が流れていたり
・上空では映画などが楽しめたり、現在どこを飛行しているかが見れたりすると思います
このように、シーンに応じてディスプレイの役割が変わる、タクシーの乗客の方にとって価値のある体験を作れるように意識しています。
- 5:30
次にこだわりのポイントをハードウェア・ソフトウェア両面でいくつかご紹介させていただきます。
- 最初にハードウェアの特徴ですが、3つあります。
まずバッテリーレスであることです。
車載環境においては熱に弱いバッテリーはタブレット端末の寿命に直結するので、電源を車両から直接供給して動作するタブレットを作りました。
そして見た目をスッキリさせたかったので、VESAマウントに対応させて直接ネジ止めができるようにしました。またボタン類などもすべて取り除いているため、本体操作をしなくても起動するようになっています。
またこのタブレットにはSIMが搭載されていないのも特徴です。これについては次のスライドで詳しくご紹介します。
- MOVの車両には配車サービスを実現させるために複数の機器を搭載していただいていますが、1つの車両に1枚のSIMしか搭載されていません。これにより、年間数千万円のコスト削減に貢献しています。
ではどうやってインターネット通信を実現しているかというと、SIMが刺さっている乗務員端末と後部座席タブレットをWi-Fi Directで接続し、さらにその上にVPNをはるという仕組みを独自開発して実現しています。
もう少しだけ詳しく言うと、ピアツーピアメッセージ用のコネクションと、インターネット通信用のコネクションの2本を常に貼っているイメージです。
- なぜWi-Fi Direct + VPNなのか、テザリングじゃだめなのか、と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
後部座席タブレットは乗務員の方の運転の妨げにならないように、乗客が乗っているときにだけ広告やコンテンツを流したいので、タクシーメーターの状態を確実に後部座席タブレットに伝達する必要があります。テザリングの場合は一般的に1対1で接続されることを前提とした仕組みではありませんので、Wi-Fi Directのほうが都合がよかったという背景があります。
また設定のかんたんさも重要です。テザリングの場合はアクセスポイントである乗務員端末と後部座席タブレット双方の操作が必要ですが、WI-Fiダイレクトの場合は非常にシンプルな操作で接続させることができます。
一方Wi-Fi Directでは通常インターネット通信はできない仕組みになっていることが多いので、私も当初は常時接続は諦めていたんですが、Androidエンジニアのアイディアで「Wi-Fi Directの上にVPNをはる」ことで常時インターネット接続ができる環境を実現しています。
- ここからはUI・UXの話になります。後部座席タブレットはタクシーメーターと完全連動していて乗務員さんが特に操作することなく、自動的にシーンに応じた様々な動作をします。
まずタクシーメーターが実車になると、乗車のお礼とともにシートベルト着用を促す案内が流れます。それが終わると自動的に広告とコンテンツが交互に流れます。
目的地に到着するとタクシーメーターが「支払い」に変わりますので、それと連動して料金の案内やキャッシュレス決済ができる画面が起動します。
このプロダクトはMOV配車だけではなくそのタクシーに乗車いただくすべての方に向けたサービスなため「嫌われない」ということを意識して開発しています。
広告以外のコンテンツもしっかり楽しんでいただきつつ、個人情報やプライバシーにも配慮した設計となっています。
- UIについても、実機でプロトタイプをつくり、実寸で何度も手触り感を確かめながらブラッシュアップしていきました。
開発初期においては、私がSketchでプロトタイプを描き、デザイナーやエンジニアに「こういうものを作りたいんだよね」と共有しつつ、デザイナーとともデザインを作りこんでいきました。
現在のデザインになるまで、少なくとも4回の大きなデザイン変更を経ていて、今も少しずつデザインのブラッシュアップをしていっています。
またここでは触れてませんが、昼と夜では車内の明るさが変わるので、ニュースのようにじっくりと見ていただきたい画面については、昼と夜ではデザインを変化させるような仕組みも入れています。
- またハードウェアの安全性を外部機関で検証しています。
具体的には頭部が激突したときに致命傷にならないかどうかを検証するため、設計段階でコンピューターシミュレーションによる試験を行ったり、試作品ができた段階で公的機関での物理的な衝突試験を行い問題ない設計になっていることを確認しています。
さらに熱や雨で重大な問題が起きないかどうかの環境試験も行っていて、メーカーが実施する試験に加えて、DeNAとして独自の基準をつくり、あらゆる角度からハードウェアの安全性を検証しています。
- このように様々な車内体験を提供している後部座席タブレットですが、今後実現したいことについてお話します。
- 後部座席タブレットは今年の1月から運用を開始してこれまで10ヶ月以上稼働していますが、これまでの気付きとしてはこのようなことがあります。
タクシーの平均乗車人数は約1.3人となっていて、比較的パーソナルな移動手段となっています。
またビジネスマン、主婦、高齢者の方など、曜日や時間帯によりタクシーに乗る理由は様々で、1つのシナリオですべてをカバーすることは難しいなと感じています。
そこで、状況に応じて最適な振る舞いをする、モードという考え方を導入しました。
- その第一弾として実装したのが、サイレントモードです。
これは、例えば葬祭など、コンテンツや広告の配信にふさわしくない場面でタクシーが利用される場合に、運行管理者さんの指示により、後部座席タブレットの一切の機能が無効になる機能です。
なおこのモードが設定されている場合は、時計だけの表示になります。
- ここからは将来の構想となりますので実装されることが決定したわけではありませんので予めご了承いただければと思いますが、例えば観光モード、イベントモードです。
例えば観光地の場合。
MOVの車両は箱根や小田原、京都などの観光地でもご利用いただけますが、観光客を乗せる場合に観光モードに設定でき、観光ガイドなどが表示される機能を考えています。これによってどうせだからこのままタクシーでいこう、というようにタクシー会社さんにとってもメリットのある行動変容を促すという効果を期待しています。
また例えばプロ野球の試合終わりで、私も経験がありますが、交通機関で急に現実に戻されるせつなさってありませんか?
劇的なサヨナラ勝ちをしたあとの余韻はできれば家に帰るまで持って帰りたい。
例えばこのタクシーであれば、その余韻をお家まで持ち帰ることもできるかも知れません。
- まとめになりますが、今までこのプロダクトを担当してきて大事にしたいなと思うことが3つあります。
まず、常に半歩先を行くということです。
公共性の高い交通サービスなので、未来を行き過ぎても理解されず、ある人にとって邪魔な機能になってしまうかもしれません。
ちょっとあたらしいくらいの体験を常に提案し続けたいと思っています。
また利益のバランスを保つということも重要です。乗客、タクシー会社、乗務員いろんな人達が関わるサービスですので、ときに乗客のためになることがタクシー会社にとっては不利益になることもあるかもしれません。嫌われないプロダクトを目指して、その利益のバランスは常にとっていきたいと思います。
そして最後はシンプルを保つということです。操作のシンプルさもそうですし、機能のシンプルさ、見せ方のシンプルさなどいろいろな意味を含んでいます。
今はまだタクシーの外と中の体験に連続性をもたせることができてないのですが、MaaSとして捉えたときに、一環した移動体験が提供できるように、これからもいろんな機能を実現していきたいと考えていますので、タクシーにのる機会があればぜひ触っていただきたいなと思っています。
- ご清聴ありがとうございました。